LOGIN「おはよう、悟司」
ぼんやりと微笑んだ美咲。だが、その可憐さは、一瞬で消え去った。 「今何時!」 叫びながら飛び起きると、カーテンを開け放ち、外を確認する。差し込む朝の光。
遠くで小鳥の声、信号待ちの車、子どもの笑い声。
「10時。外は平和だよ。見える範囲では」 俺の返事に、美咲がこちらを振り向いた。その目は問う──「見える範囲では?」と。
息が詰まる。胸が痛い。それでも首を横に振り、言葉を絞り出した。 「状況は最悪だ。調べた限り、明確に悪化している。俺にはこれからどうなるか、もう分からない」 俺の話を聞きながら、美咲は立ち上がり、冷蔵庫から昨夜の弁当を取り出した。電子レンジにかけながら、ぼそりと呟いた。 「しっかり食べて、生活を崩さない。サバイバルの基本……って聞いたことがある。守りましょう」 ご飯を口に運び、着ていたパジャマを脱ぎ捨て、黒いジャージに着替える。それだけで美咲はもう戦場モードに切り替わっている。 「さて・・・」 テーブルに腰を下ろすと、開口一番。 「これは現実かどうか。その判断は終わり。これは現実よ!」 その言葉に頷く。 「手当たり次第に調査するのは時間の無駄。最優先は安全な生存手段の確定!まずは政府対応と公式発表を探すわ。生き延びるための避難指示や対処指針を拾いましょう」 その方針に沿って、俺は、美咲と手分けして政府系のサイトから《生存のヒント》を探していく。厚労省、内閣府、警察庁。
・・・何もない。 あるのは、危機管理局が出した「自宅待機」の指示だけ。 「そっか。今日は土曜日。政府の対応力は下がっている……国会も、省庁も休み」 画面をスクロールする手が止まる。 「あ、運休。そもそも役人の人たち、省庁に出勤できないんじゃないか?」 ──政府の機能不全 「物理的に会議を開けない。決められない?そういうのはリモートで……手軽にできるのかしら」 美咲の呟きは、虚空に溶けた。 「避難所開設の公式発表はないな。護国寺の近くに学校ってあったか?体育館だろ?」「災害時はね。でも、これは違う」
美咲が珍しく迷っている。 「悟司、どうしたらいいと思う?」 頼られると頑張りたいが、俺の凡人発想力じゃあなぁ。 「……幸い、先行事例は多い。大抵の場合、避難所、ショッピングセンター、自宅籠城、自警団の結成でマンションごとや区画ごと、あとは田舎への脱出、孤島や船は羨ましいパターンだが……」「学校は防犯面で弱いわよね。乗り越えられるフェンス。あれ、自衛隊や警察が防衛しないと成立しないけど、その防衛命令はいつ出るんだろう。軍が動いて学校を守る?なぜ学校?国家中枢や皇居でなく?命令外の独断なら補給はない。そうなると物資が持たない。食料……。学校に備蓄があった記憶ないんだけど……」
少し考えて、美咲が結論を出す。 「護衛がいない学校に集まる民間人。発症者が紛れていたら?または、体育館の扉を閉めて、周りがゾンビに囲まれたら?……その時点で死ぬわね」 その言葉がリアルに重い。容易に想像できるからだ。 「ピーポーピーポー」 窓の外を救急車が走っていく。また、走っていく。音が、過ぎ去った。
あの救急車が到着する病院・・・今、どうなっているんだ。
さっきから病人か暴徒が運び込まれ続けているだろ。分からない。想像できない。
頭を振って、美咲との話に意識を戻す。
「ショッピングセンターや自警団は、内部崩壊のお約束がある。だがなぁ、ショッピングセンターを要塞化って……難しいだろ。今から俺たちが店舗に乗り込んで、店員とか、中にいる人間を追い出すのか? 呼びかけて、入り口を封鎖?警察呼ばれるな。営業妨害だし」「そうね。でも、ゾンビが増えるのを待っていたら、そこまで移動するリスクが大きくなる。ショッピングセンターに入って、潜伏する?頃合いを見て動く?シビアなタイミングよね。動く前に感染者が入ってきたら籠城にならない。最悪、逃げられない」
「……そういえば、ショッピングセンターが要塞に変わっていくシーンは見たことないな。要塞になり終わったシーンはよく見るが。今はまだ無理だ。中に感染者が入ったらもう遅い。いつならできる?」
「店長や店員が店を放棄したらできる。または、本部の指示を無視して、店長やスタッフが封鎖に協力してくれるなら?どう考えても無理筋ね。バックヤードに押し入って、スタッフを捕まえて、店長に繋いで、封鎖を説得する?無理よ。試すことすら、無理。警察を呼ばれたら捕まる。そして、警察署へ。そこは暴徒の溜まり場だわ」
その言葉にビジョンが浮かぶ。無人になった警察署の檻の中。ゾンビ警官に囲まれるイメージ。ブルリと背筋が震える。
檻の鍵を開けられる《人間》はもういないのだ。
・・・餓死するしかない。
「……俺としては物資満載の船や自給自足可能な無人島がベストアイデアだと思う。実現できるならな」「船、それはいいわよね。でも、これもショッピングセンターと同じジレンマがあるわ。今から行って船を強奪するわけにはいかない。運転もできないし。小さな漁船ならワンチャン?」
「待ってくれ、美咲、海上じゃ、補給が不可能だ。補給面で言えば、無人島で自給自足の方がいい。けど、どの無人島に行く?そもそも今から行けるのか?鉄道は動かない。幹線道路は渋滞。多分、もう戻らない。……移動できないぞ」
話してて思うが、移動できないんだよな。 「移動できないなら、田舎に逃げるのも無理。色々考えても、結局、自宅待機と可能な限りのシェルター化しかないわね。そして、この災害が収束するのを祈る?これが選べる最適解かしら。もし、収束しなければ、数日で水が尽きる。お風呂に溜めた水だって……無くなる。生きるためには、継続的な補給が絶対に必要。でも、どこから?」「・・・」
答えられない。未来が収束していく。
──遅かれ早かれ、美咲も俺も死ぬ 認めたくない現実から俺は必死に目を逸らす。 「だから、小説でも移動するんだな。ゾンビと戦いつつ、物資を集めながら点々とする。外に出るなよ危ないって思っていたけど、切実な理由はあるわけだ」「美咲、ゾンビと戦うリスクは理解しているが、準備を整えれば戦えるだろうか?」
「物理的に無理。でも、知恵を絞りましょう。生きるためにゾンビを排除する方法論が必要。なら、次はゾンビの生態について調査して、アタシたちが取れるゾンビの壊し方を考える。見つかれば、生き延びる目が出る」
無言で美咲がPCを叩き始める。俺もスマホで調査を再開する。休日ということもあり、政府の動きは遅い。未だ公的な避難所はない。
自宅待機と要塞化が現状では唯一解。その場合、食料と水の継続的な補給が必須。外出を繰り返すなら、ゾンビとの戦闘を生き残る手段が死活的に必要だ。 それがない場合・・・ あぁ、この部屋が俺たちの墓場になるのだろう。もしくは、移動中にゾンビに喰われるか・・・。
目頭が熱くなる。掌のスマホに無性に縋りつきたくなる。
生まれてこの方、初めての感情。 ──これが、《絶望》って奴なのか?パソコンを閉じ、美咲もローテーブルに座る。「駐屯地に受け入れてもらえるか……これは賭けね。フェンスを乗り越えて入る。保護されている内に役割を見つけて軍内で価値ある人材になる」「今の時点で、自衛隊がアタシたちに危害を加えるとは思えない。保護される可能性は十分にある。入れてもらえないかもしれないけど……そのときはそのときね。諦めず侵入する手を探しましょう」──もし断られたら?そのリスクを指摘しようとして、だからなんだと言う答えを自分で得る。ここに残っても、受け入れられなくても、死ぬだけだ。動いて、受け入れてもらえるなら生きる可能性が繋がる。もはや、0ではないという可能性に縋るしかない。「問題はどう行くかだな」練馬駐屯地の最寄り駅『平和台』まで電車で15分。一瞬で行ける。・・・動いていればな。最新の情報で運休が確定した。ダイヤ調整は諦めたらしい。「……徒歩で行く」「護国寺から練馬までか?」頷く美咲。「それしかないわよ」──ゾンビがいる中、歩きで延々と?正直怖い。危険すぎる。心はそう言っている。「幹線道路は渋滞。車は無理。音が出るバイクもダメ。自転車はいいけど、警戒が疎かになる。タックルされたら転倒して死ぬ」「だから、静かに偵察しつつ移動できる徒歩移動しかない」しかし、美咲の言葉を頭で《理解》してしまう。それしかない。ならば、問題はいつ動くか?そして、どうゾンビと戦うか?スマホを傾ける。勝ち気な美咲の待ち受け画像に時刻が出る。──14時38分まだ明るいが、もうす
美咲を追って、クーラーの効いた室内に戻る。重く閉じられたカーテンの隙間からは、さっきまでの修羅場の音も届かない。快適ないつもの日常だ。ローテーブルを挟んで、美咲と向かい合った。彼女は姿勢を正し、冷たい声で切り出す。「現時点で、アタシたちに生き残る可能性はない」俺は唇を噛み、頷いた。美咲は表情を変えず、言葉を積み重ねていった。「最善の選択は籠城。でも、さっきの女性を見たわね?顎を殴られても鼻を潰されても、止まらなかった。小柄な女ですら致命的脅威よ。もし大柄な男だったら? 勝てるわけがない」事実の羅列。希望の余地は削られていく。「つまり、最善手を打ち続けてもアタシたちは死ぬ。もって……1週間ってところね」淡々としたその言葉は、絶望を告げているのではない。ただの事実確認だ。何故だろう、彼女の顔は、唇を固く結び、《重苦しい覚悟》に染まっていた。美咲は何を思いついたんだ?身じろぎすらせず、彼女に言葉を待った。美咲は俺を真っ直ぐに見つめ、言う。「そして、アンタの問い。答えは一つ」「この状況で生き延びる人間は、既に生き延びる準備をしてきた人間だけよ」「アタシたちが生き延びる方法は、生き延びる準備をしてきた人の保護を受ける、寄生する、または、乗っ取る……。それしかない。他人が作った生存の可能性に相乗りするわよ」──生き残る準備をしてきた人間あぁ、なるほど、確かに。可能性の細い道。暗闇の中、さっきまでは無かった未来に続く一本のラインが見えた。生き残る用意をしている人間は、助かりうる。その人間に助けを求める。だが、美咲は言葉を繋いだ。──乗っ取る。寄生する。助けてくれと言って助けてくれるわけがない。
美咲の血の気の失せた白磁のような頬を涙が伝う。無表情の中、目だけが僅かに揺れていた。 彼女は考えて、《死》という結論を得た。今、感情が追いついてきたんだろう。 俺は警官のいない交番を見て、ゾンビが増えることを考えて、頭で《死》を理解した。でも、まだ、感情が追いついていない。 「何とかなるさ」というカラ元気も、「きっと政府が何とかしてくれる」という希望的観測も、今は何の役にも立たない。そんな小手先の言葉では、美咲の明晰な理性の前で、慰めにすらならない。 ──あまりにも無慈悲だ 美咲が見せる絶望の涙。拭くことも、顔を覆うこともなく。俺を見ているようで、何も見ていない。・・・美咲のこんな表情、見たくはなかったなぁ。慰めたい。でも、言葉なんて思いつかない。 だから、そっと美咲を抱き寄せる。 「……助からない」 力なく引かれるままもたれ掛かる美咲を、ギュッと強く抱きしめる。 「どこにも可能性がない」こんなに熱くて柔らかい美咲の身体が、冷えて硬くなるなんて、俺には信じられなかった。でも、頭では理解している。どう動いても、死ぬ以外の選択肢が見つからない。 ゾンビに齧られて、激痛の中、息絶えるのか。停電になって冷房が無くなった部屋で渇き死にするのか。 選べるのは死に方だけだ。 ──美咲だけでも助けたい だが、状況は俺の命を使ってどうこうできる領域には、ない。 どうせ死ぬなら・・・ 「一緒に死ぬか……」覚悟もなく、考えもせず、ただ、想いが口から漏れる。俺の腕の中で、美咲がビクリと震えて止まる。言っていてなんだが、悪くない選択肢に思えてくる。昨日まで自殺願望などなかったんだがな。ゾンビにならず、あまり苦しまずに、一緒に逝けるなら。飛び降りで即死するには何階以上に登ればいいんだろう・・・? 俺の頭が死に逃げ始めたとき、美咲の声が引き留めた。 「死にたく、ない。アンタに死んでほしくない。アタシも、まだ生きていたい」 絶望の中で美咲が呟く「生きたい」。その言葉が、どうしようもなく胸を揺らす。思わず、歯を食いしばった。視界が滲んでくる。死のうかと言ったときには出なかった《涙》が今更に込み上げる。 俺だって生きたい。まだプロポーズすら・・・できていないのだ。生きたいと言い、強く俺にしがみ付く美咲の肩に顔を埋めた。涙が零れていくが
「ぶっ殺すぞ、このクソババァ!!」破裂するような怒声が窓ガラスを震わせた。真剣に暴徒の動画分析をしていた俺は、その場でビクリと跳ねた。見れば、美咲すら肩を強張らせている。さっきまで子どもの笑い声が響いていたはずの昼下がり。今はただ、威嚇する獣の咆哮だけが響いていた。美咲がしなやかな猫のように機敏に席を立ち、窓際へ駆け寄る。「下かも。見えるかな」隣に立った俺に美咲が囁く。彼女は真剣な表情でカーテンを指先でかき分け、音を立てぬように窓を開ける。2Fのベランダに身を伏せ、目だけを外に出して覗き込んだ。俺も習う。視線の先。片側2車線の大通りの向こう側。正面だ。歩道に地味な服装の小柄な女性が倒れていた。一つ結びの白髪交じりからして中年だろうか。その女性に怒鳴りつけているのは身長180センチはある大男だった。分厚い肩と太い腕。汗に濡れた顔を歪め、怒声を繰り返している。──どう見てもカタギじゃない。どういう状況だ?混乱するが目が離せない。状況が動く。四つん這いになった小柄な中年女性が起き上がり、大男に向けて全力疾走する。女の体当たりを肩で弾き飛ばす大男。後ろに吹き飛ぶ女。だが、激突の勢いに男も体勢を崩す。飛び跳ねるように起き上がった女が男に迫る。ファイティングポーズを取った男の拳が閃いた。顎先、鼻梁、こめかみ──人間なら即座に沈む急所を容赦なく狙い撃つ。女の鼻から血が噴き出し、首がねじ切れそうに顔が揺れる。鈍く重い音が続けざまに響いた。「上手いわね」横で美咲が低く
「おはよう、悟司」 ぼんやりと微笑んだ美咲。だが、その可憐さは、一瞬で消え去った。 「今何時!」 叫びながら飛び起きると、カーテンを開け放ち、外を確認する。差し込む朝の光。遠くで小鳥の声、信号待ちの車、子どもの笑い声。 「10時。外は平和だよ。見える範囲では」 俺の返事に、美咲がこちらを振り向いた。その目は問う──「見える範囲では?」と。 息が詰まる。胸が痛い。それでも首を横に振り、言葉を絞り出した。 「状況は最悪だ。調べた限り、明確に悪化している。俺にはこれからどうなるか、もう分からない」 俺の話を聞きながら、美咲は立ち上がり、冷蔵庫から昨夜の弁当を取り出した。電子レンジにかけながら、ぼそりと呟いた。 「しっかり食べて、生活を崩さない。サバイバルの基本……って聞いたことがある。守りましょう」 ご飯を口に運び、着ていたパジャマを脱ぎ捨て、黒いジャージに着替える。それだけで美咲はもう戦場モードに切り替わっている。 「さて・・・」 テーブルに腰を下ろすと、開口一番。 「これは現実かどうか。その判断は終わり。これは現実よ!」 その言葉に頷く。 「手当たり次第に調査するのは時間の無駄。最優先は安全な生存手段の確定!まずは政府対応と公式発表を探すわ。生き延びるための避難指示や対処指針を拾いましょう」 その方針に沿って、俺は、美咲と手分けして政府系のサイトから《生存のヒント》を探していく。厚労省、内閣府、警察庁。 ・・・何もない。 あるのは、危機管理局が出した「自宅待機」の指示だけ。 「そっか。今日は土曜日。政府の対応力は下がっている……国会も、省庁も休み」 画面をスクロールする手が止まる。 「あ、運休。そもそも役人の人たち、省庁に出勤できないんじゃないか?」 ──政府の機能不全 「物理的に会議を開けない。決められない?そういうのはリモートで……手軽にできるのかしら」 美咲の呟きは、虚空に溶けた。 「避難所開設の公式発表はないな。護国寺の近くに学校ってあったか?体育館だろ?」「災害時はね。でも、これは違う」 美咲が珍しく迷っている。 「悟司、どうしたらいいと思う?」 頼られると頑張りたいが、俺の凡人発想力じゃあなぁ。 「……幸い、先行事例は多い。大抵の場合、避難所、ショッピングセンター、自宅籠城、自警団の結成で
カーテンの隙間から差し込む朝の光に目が覚めた。隣では、美咲が静かに寝息を立てている。こちらを向き、毛布が規則正しく動いている。眉は凛としていて、まつ毛は長い。普段は勝ち気に光る瞳は閉じられ、今だけは可愛らしさが見て取れる。張りのある唇は柔らかく結ばれ、まるで守られるべき少女のようだ。これは、目が覚めればすぐに消えてしまう《幻》。その安らかな寝顔を、今は、壊したくなかった。 窓の外からは小鳥の鳴く声、信号待ちの車のエンジン音が聞こえてくる。まるで深夜の買い出しが悪夢だったみたいだ。暑苦しい《ツーマンセル》。あれが一夜の笑い話になればいい。いや、そうあってほしい。 祈るようにゆっくりスマホを手を伸ばす。待ち受けには午前9時08分の文字。6時間弱寝たことになる。SNSで情報収集を始めた。 ──なん、だよ、これ 加速度的に状況は悪化していた。SNSのトレンドは昨夜の事件のニュース、暴力事件も入っている。それは野球やテレビ番組の中に異物のように紛れ込んでいた。渋滞、運休の文字も踊っている。 都心ヤバすぎのSNS投稿。首都高で複数箇所の玉突き事故。通行止め。都内の路線は始発こそ動いていたが、複数の列車で車内トラブルのため、一時停止。今はまだ動いているが、断続的に列車が止まっている。 『山手線が動いては止まるを繰り返していてウケるwww』 列車が止まる。犯人は暴れて、ケガ人が感染するならその人たちはどこに行く? 警察署と病院だ。ケガ人と暴徒の対応で電車が止まる。1箇所じゃない。ポツポツそういう人がいるだけで、列車のダイヤは崩壊した。脆すぎる・・・。 『梅雨なのに東京は大雪状態w』 幹線道路の渋滞情報を見る。川越街道、不忍通り、明治通り・・・都心の太い道路が黄色、オレンジでベタ塗になっている。赤ではないから、詰まってはいない。でも、渋滞だ。複数の玉突き事故と放置車両? 放置車両ってなんだ。道路上に車だけが置いてあるってことか。 何故? 事故処理車も渋滞に巻き込まれてスタックしている報告がSNSのドライバー経由で上がっている。 『事故した人たちが乱闘中』 もう、動画を開く気にはならない。見なくても分かる。《暴徒》と一般人だろう。 いつの間にかスクロールする指が止まっていた。握ったスマホの裏側がじんわり暖かい。画面を見ているようで俺